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【2023/10/23追記】2023年2月取材時からの取り組みはYouTubeでも紹介!

2023年2月の取材時からも様々な取り組みを継続中のエアポートトレーディング。
その取り組みの詳細は、こちらからもご覧いただけます!(TV放送終了後よりご覧いただけます)
TV版の見逃し配信はこちらから(TV放送終了後よりご覧いただけます)

【取材当時から進んだ取り組み】
◆県内ホテルに設置された二次元バーコードからエアポートトレーディングのサイトにスマホでアクセス。オンライン上で数千種類のお土産の中から選んで購入・決済すると、空港内のAI顔認証方式スマートロッカーで受け取れる仕組み
→取り組みは継続中。ホテルでのPRの必要性など様々な課題が見えてきているところ
◆アバター接客を組み合わせた完全セルフレジ
→導入・運用開始、無人店舗での問い合わせなどに対応している。無人レジは多いと1台で120以上の利用あり

【今後の展望】
・フライト増で深夜早朝便も出てくる見込みがあり、無人店舗の拡大などで対応できる環境を作りたい

【新たなツールへの向き合い方】
AIをはじめとする様々な新しい技術も、人の仕事を奪うライバルではなく、仕事を助けてくれるパートナー。そんな見方でITツールと上手につきあっていければ、会社も成長していける

社内で25を超えるデジタルツールを活用し、実証実験にも積極的に取り組むエアポートトレーディング株式会社は、那覇空港内の土産品店8店舗、飲食店1店舗の運営を行っています。
2012年の設立から2022年まで代表取締役社長を務めた丸橋弘和(まるはしひろかず)さんは、「より筋肉質の企業体質を構築したい」と、抜本的な改革とデジタルツール活用した業務効率化を断行。コロナ前の2019年度には、設立当初20憶円だった売上を30憶円に、人時生産性(にんじせいさんせい/売上総利益÷社員総労働時間)を約2.5倍に押し上げました。さらに、那覇空港の抱える課題や多様な働き方の実現も視野に、様々な取り組みを進めています。
現在は相談役として会社を見守る丸橋さんと、2013年から現場に立って丸橋さんを支えてきた現代表取締役社長の大城康(おおしろやすし)さんにお話を伺います。

トップダウンで進めた業務改善の基盤創り

那覇空港ビルディング株式会社の関連会社であるエアポートトレーディングが担うのは、食品を中心に雑貨、泡盛、コスメ、輸入品など幅広い商品を扱う空港での物販事業。
2012年以降、売上や生産性を大きく伸ばしてきた同社は、様々なデジタルツールにより社内業務を効率化するだけでなく、デジタル技術の活用により顧客に新たな付加価値を提供しています。その成長の裏側には、トップダウンで進めた全社規模での改善・改革がありました。

2012年当時、エアポートトレーディングには利益の確保、大量在庫の解消、生産性の向上といった様々な課題がありました。そこで、代表取締役社長に就任した丸橋さんは、意識改革(人財育成)、構造改革(仕組の構築)、業務改善(効率化)を3つの柱として打ち出します。
コスト削減、仕入制度刷新、店舗管理・運営の一元化など、業務の土台部分を根本から次々と変えられたのは、トップダウンならではのスピード感と経営判断があってこそ。

新たなスタートの場合は特に、かけられるコスト、業務の流れの変革や取捨選択の判断を行うトップが改革の必要性を理解していることが重要です。中長期の展開を考えた上で行わなければならず、コロナ禍のように経営環境が厳しい中では特にその判断は重いものになり、ボトムアップでは非常に難しくなると思います」(丸橋さん)

「当時、売上は右肩上がり。でも、大事なマンパワーを細かな在庫管理に費やしている状態でした。それでは売上が1.5倍になれば1.5倍のスタッフが必要になってしまい、労働人口が減少に向かう中ではいずれ行き詰まる。根本的に業務のやり方を変えなければならず、たくさんの改革が必要でした」(大城さん)

左から、相談役の丸橋さん、代表取締役社長の大城さん

 

改革に際し「スタッフの考え方を変えるのが一番大変だった」と語る丸橋さんは、様々な教育研修の実施、経営理念やクレド(従業員の行動方針)の共有、感謝の気持ちを伝え合う「サンキューカード」導入などでスタッフの心理的側面をサポート。意識改革にも力を注ぎ、改革の土台を整えていきました。

業務が変わる実感でデジタル化に前向きに。その導入・運用のポイントは

丸橋さんは、より効率的で働きやすい環境を整えるため、大枠の仕組みやスタッフの意識変革とともに、「DX以前の問題だった」アナログな業務についてもデジタルツールを駆使した効率化に踏み出します。

「デジタル化に対する一人一人の理解や浸透には時間が必要で、新しいやり方や変化をネガティブに感じる人がいるのも当然」という丸橋さんの考えのもと、部署のリーダーやキーパーソンにデジタル化の意味を伝え、理解してもらうことを重視。まずは試し、うまくいかなければ元に戻す方針で進めました。

最初は新しいツール、新しいやり方に消極的だったスタッフも、体験することで変わっていくことを実感したと大城さんは語ります。

「例えば重かった無線がスマホになって軽く扱いやすくなる。チャットツールで情報の確認や共有が簡単になる。業務が変わるのを実感することで、『次はこれを試してみよう』と、新しいものへの反応がポジティブになっていくのを感じました

現在、エアポートトレーディングで社内情報共有や業務効率化を目的に使われているデジタルツールは25以上。段階的に進める、複雑なオペレーションを避けるといった工夫も功を奏し、ほとんどのツールがしっかり機能。

「既存の業務処理の形をそのまま置き換えようとすると、複雑なカスタマイズやシステム開発が必要になってしまいます。導入するツールに合わせアレンジする視点も必要です」(丸橋さん)

〈エアポートトレーディングで活用しているツールの一例〉
◆ビデオ会議ツール、チャットツールでの情報共有
・iPadおよびスマホを全スタッフに配布し、ミーティングやリアルタイム情報共有
◆位置情報とウェブカメラ、IP無線対応スマホによるスタッフの流動的店舗配置
・スタッフは発信機端末を装着、管理室のモニターに誰がどの店舗にいるか表示される
・ウェブカメラの映像から各店舗の様子を確認、無線で人が集中している店舗にスタッフを配置
◆位置情報による空港入館パスの管理
・スタッフや業者が使用する約500の入館パスの貸与・返却を位置情報で管理
◆POSレジと精算支払管理ポータルサイトによる仕入・請求
・POSの売上データをもとに請求額を自動算出、システム上で仕入元およびエアポートトレーディングの仕入担当が承認ボタンを押すことで経理担当へデータが送られ、登録口座へ指定日に振込が行われる。従来2週間ほどかかっていた売上や請求額の確認がほぼ不要に

「社内の体制という土台を整えておかなければ、最終的により高いレベルのサービスにつなげられない、あるいは限界が生まれてしまうことになります。また、事業規模が大きくなればなるほどそうした土台の整備には時間とお金、手間がかかる。まずは基礎を固めようと思いました」(丸橋さん)

明確に事業規模拡大を意図するトップのもと、社内業務をデジタルに置き換え、効率化・省人化を実現したエアポートトレーディングは、2022年8月からAIやアバターを使った二つの実証事業を開始。より質の高いサービスの実現に向け、対外的なデジタル活用にも踏み出しました。

ウェブとAI認証でスキマ時間にお土産を選び、買う時間を創出

一つ目の実証は、店舗側と顧客双方の課題にアプローチすることで、販売機会の最大化を意図したもの。

県内ホテルに設置された二次元バーコードからエアポートトレーディングのサイトにスマホでアクセス。オンライン上で数千種類のお土産の中から選んで購入・決済すると、空港内のAI顔認証方式スマートロッカーで受け取れる仕組みです。

「飛行機の離発着時間はお客様が集中して大混雑。レジ待ちの長い列ができ、搭乗時間に間に合わず商品を棚に戻す方の姿も多く目にしていました。レジを増やして回転率を上げるにも限界がありますし、コストも人手も必要になります。

結局のところ、お客様も私たち店舗側も時間がなくて困っているんです。それをどうにかできないかと考えました」(大城さん)

事前にオンラインで注文・支払を済ませ、リアル店舗やピックアップポイントで商品を受け取る。BOPIS(Buy Online Pick-up in Store)やC&C(Click&Collect)と呼ばれるこの仕組みでは、消費者側は商品購入や受け取るタイミングを自分で選ぶことができます。店舗側も物流コストや人手を削減できるほか、商品のピックアップに訪れるお客様の「ついで」購入などが期待でき、双方にメリットの多いものになっています。

成功と言える結果が出て、しっかりしたデータを取れるようになるまで実証を継続する予定です。いかに知ってもらうか、どうすればもっと便利だと感じて利用してもらえるサービスになるかBOPISやC&Cが今後主流になることは間違いないので、事業化に向け改善点を探し、対応しているところです」(丸橋さん)

アバター接客×セルフレジで利便性向上・店舗運営省人化

二つ目の実証は、利用者の精算時間短縮や利便性向上とともに、無人化を含めた店舗省力化、多言語対応、深夜・早朝便増便対応や多様な働き方の推進などを視野に入れた取り組み。アバター接客を組み合わせた完全セルフレジの導入です。

商品のバーコードスキャンから決済まで利用者が行いますが、遠隔オペレーターも待機。液晶モニターに映し出されるアバター(仮想空間上のキャラクター)を介し、レジの操作や決済方法、商品についての疑問や質問に答えます。

これに合わせ、通常レジ4台を、上記のセルフレジ1台と精算を利用者が行うセミセルフレジ3台に変更。通常レジでは1台に一人のスタッフが必要でしたが、セミセルフレジ導入で一人のスタッフが3台すべてを管理できる体制に移行しました。

当初は有人レジの利用が多かったそうですが、徐々に浸透し、利用する方も増えているそうです。

操作が簡単で待ち時間も少ないため、サービス向上にもつながっていると感じています。基本的には無人運用が可能で多言語対応もできるので、国際線再開時の深夜・早朝営業にも活用したいと思っています」(丸橋さん)

那覇空港の抱える課題解決、働き方多様化も視野に取り組む

セルフレジとアバター接客の活用は、実は那覇空港の抱える周辺道路の慢性的な渋滞、駐車場不足といった課題解決の糸口としての側面も持っています。
アバター接客のオペレーターは現在空港内に出勤する形ですが、自宅などからのリモートワークも可能。通勤者を減らすことで駐車場不足や渋滞緩和の一助になると考えられます。

「他店舗も含め利用台数が増えれば、専用のコールセンターを設置したり、障がいのある方や子育て・介護中の方などを在宅勤務で雇用したりすることもでき、働き方の多様化に対応できると考えています。今後増便が予想される深夜や早朝といった時間帯の勤務でも、スタッフの負担を軽減できる仕組みです」(大城さん)

自社の課題のみならず、那覇空港の抱える課題解決にも積極的に取り組むのは、丸橋さんが空港全体を一つの商業施設ととらえているから。

「各テナントの努力も大事ですが、導線の改善、滞在者数・滞在時間数・リピート率向上などは施設全体で総合的に取り組まなければなりません。駐車場不足や二次交通、周辺施設との連携や差別化は、空港ビル全体で、場合によっては行政も巻き込んで対応していくべきと考えています」

改革の基盤創りから取り組み、社員の意識改革やデジタル活用による効率化を進め、さらには物販データとホテルの顧客データとの連携・活用なども視野に、実証段階にあるアバター接客、BOPIS やC&Cの利用の拡大・定着も見込むエアポートトレーディング。

丸橋さんは、DXを進める上でのトップの重要性を次のように語ります。

コンサルや社員頼みでは、不必要なコストや時間がかかったり、⼤きな失敗につながったりします。また、DX には⾃社内の改⾰だけでなく、関係する取引先などの理解、協⼒も必要になります。詳細は別としても、責任を取れる、また取らなければならないトップが、⼤所⾼所の視点から、推進するデジタル化を理解して進めなければ、ラッキー以外で成功することはないと思います」

【会社概要】
事業内容:小売販売・飲食フランチャイズ事業
所在地:沖縄県那覇市字鏡水150番地 那覇空港国内線ビル1階
代表者:代表取締役社長 大城康
設立:2012年9月3日
従業員数:55名(2022年)
TEL. 098-840-1473
FAX. 098-840-1363

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