- 事例紹介
- IT活用
BEFORE & AFTER
- kintone(キントーン※)を導入し、クラウド上で日報を作成することで、タスク管理やチーム内のコミュニケーションが円滑になった。また、派遣先企業・派遣スタッフの管理や就業履歴の更新・共有に苦労していたが、kintoneに顧客管理のアプリを追加することで必要な履歴情報へのアクセスが容易になった。
※kintone=サイボウズ株式会社が提供するアプリケーション。webデータベース型で、企業や業務内容に合わせたシステムが構築できるほか、顧客管理や申請ツール、チャット機能、勤怠管理などさまざまな機能を自由にカスタマイズできる。
※ Microsoft Office Access = Microsoftが提供するデータベース管理ソフト。大量のデータを整理・蓄積し、必要に応じすぐに取り出せるよう管理する目的で利用する。データベースの作成からデータの追加、更新、削除などの機能を備える。
株式会社ビジネススタッフは、働き手を求める沖縄県内の企業へ正社員または契約社員として人材を派遣する人材紹介・人材派遣会社で、現在約2500人の派遣登録者を抱えています。派遣先企業の開拓や仕事内容の調整、派遣スタッフの雇用やそれに伴う契約書の締結、社会保険・福利厚生等の手続き、給与の支払いなど、人材派遣・企業紹介におけるさまざまな業務を、代表取締役の髙木美香子さんを含め、3名のチームで遂行しています。
今回はkintoneの導入の旗振り役となった髙木さんに話をお聞きしました。
既存の管理システムが限界を迎える
「それぞれが異なる業務を広範囲に担当しているので、各自のタスク管理や業務の進捗状況を把握するために、データベース管理システム Microsoft Office Accessで『日報』を作成していました。本来であれば、派遣スタッフの状況や派遣先企業のニーズを日報で確認し、過去の履歴とも照らし合わせて最適な対応に結びつけたいところです。Accessの機能をしっかり使いこなせばそれも可能なのですが、独学だったためそれが難しく、顧客情報や派遣スタッフのデータとの紐付けがうまくいかなくなっていました」
その後Excelへの移行を試みるも、複製したシートが日ごとに蓄積されていくため、過去の活動履歴を遡る手間が増えるというデメリットが。そんな折、ITツールの導入前後に専門家派遣(ハンズオン支援)も受けられる「小規模事業者等IT導入支援事業(令和4年度より)小規模事業者等デジタル化支援事業」の存在も後押しになり、髙木さんは新たなITツールの導入を決めました。
「ハンズオン支援担当の方に私たちの困り事をお伝えしたところ、課題を的確にキャッチして『kintone』を提案してくださり、支援事業への申請前からサポートいただけてとても助かりました。20年近く使ってきたソフトから初めて目にするツールへの移行に不安はありましたが、導入前に機能や操作方法をこと細かに教えていただいたことで、前向きに決心することができました」
kintoneの直感的なインターフェースは、「入力しやすい」とメンバーからも好評。日報がクラウド上にあることで、社外からも確認・編集できるようになり、髙木さんもメンバーも、「日報業務がラクになった」と実感しています。
シンプルな”コメント機能”で社内のコミュニケーションが活性化
さらに日々の業務を円滑化したのは、日報へのコメント機能です。ビジネススタッフの日報では、実施したタスクだけでなく、派遣先の現場から得た情報などもきめ細かく記載しています。髙木さんが気になった箇所にコメントすると宛先に指定したメンバーに通知が届き、通知を受け取ったメンバーがそれに返信することで、即座にその問いかけに応えることができるように。この機能によって気軽なやり取りが増え、現状把握と課題への着手がスピーディーになりました。
「コミュニケーションが取りやすくなったことで、メンバーからの相談や提案が増えました。これまでは、毎朝の朝会で私の考えを伝えることが多く、メンバーの意見の吸い上げまではできていませんでした。kintoneのコメント機能を使うようになってからは、前日の日報とコメントのやり取りを材料に朝会を運営するようになり、結果的に自然とメンバーの声を聞くことが増えています」
お互いの考えを共有する機会が増えてきた中でメンバーから上がってきたのが、「定例会議の議事録や顧客情報もkintoneで管理できないか」という提案でした。
18年分のデータに埋もれた顧客情報が蘇る
ビジネススタッフでは、新規顧客企業への営業状況、契約企業のリストや派遣履歴、2500人にのぼる派遣スタッフの雇用契約書や給与に関わる書類といったデータを、約18年もの間Accessに保存してきました。
また、労働者派遣事業や職業紹介事業に関する法律は2、3年に1度の頻度で更新されるため、そのたびに契約書類をアップデートする業務が発生します。同じ派遣スタッフを同じ会社に継続派遣する場合でも更新時に新たな契約書を作成する必要があり、派遣スタッフの書類データは際限なく増えていきます。
長年蓄積されてきた膨大なデータから今必要なデータを引き出すために、大変な時間と手間がかかっていました。
「派遣先企業や派遣スタッフの情報を確認する場合、1つのページを開くのに5、6項目を埋めなければならない上に、半角・全角が違っているだけでも検索に引っかからない。人によって登録の方法が違っていて、あるはずの情報になかなかたどり着くことができませんでした」
情報にアクセスしようとするたびに画面がフリーズするなどの不具合も起き、仕事が中断されて心理的にも負担になっていました。
そうした状況を見たハンズオン支援担当者の助言もあり、kintoneに『顧客管理』のアプリを追加することに。
「ハンズオン支援制度は私たちのような小規模事業者にとって本当にありがたいものでした。導入ツールの紹介だけでなく、ITの専門知識を持つ担当者が、申請に関わる書類作成から導入後の運用まで継続的にフォローしてくださったからこそ、新たなデジタルツールを使った業務改善に向き合うことができたと感じています」
顧客管理アプリの追加で、分散された情報を集約できた
こうして新たに、kintoneに「顧客管理」のアプリが加わりました。
「顧客管理」アプリでは、企業名やスタッフ名でキーワード検索すれば過去の取引に関する記録を一括で閲覧できます。日報アプリとも連携し、日報に記載された関連情報とも紐付けが可能に。
「過去の履歴から最新情報まで正確に把握できることは、より精度の高い企業と派遣スタッフのマッチングにつながります。また、今までメンバーそれぞれの頭の中にしかなく属人化していた情報が、日報を通して顧客情報に紐付き、お互いにサポートし合える環境が整いました。これは弊社のメンバーや派遣スタッフの働きやすさ、派遣先企業の満足度にもつながっていくと考えています」
髙木さんは、ハンズオン支援担当者のアドバイスでGoogle Workspace(グーグルワークスペース※)の導入も決行。搭載された機能を使って派遣スタッフや派遣先企業へのアンケートを実施するなど、顧客理解を深める新たな取り組みも進めています。
ITツールの導入による業務改善に一定の成果が見えてきた今、髙木さんは改めて志したことがあるそうです。
「直接会わなくても連絡を取れる時代だからこそ、改めてリアルなコミュニケーションの大切さを感じています。
日報業務や顧客と派遣スタッフの情報へのアクセスがラクになったことで浮いた時間とエネルギーを使い、
今まで以上に派遣先企業へ足を運び、担当者の方やそこで働く派遣スタッフとの信頼関係を深めていきたいと思っています。
小さな会社だからこそひとりひとり、一社一社に寄り添うことができる。
私たちの強みを強化し、成長していきたいと思っています」
ITツールのスムーズな導入によって生まれたゆとりを、強みの強化に生かす。日報や社内情報の検索という、見落とされがちな細切れの業務の効率に着目したことが、会社が未来を描いて進むための後押しになっています。