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BEFORE & AFTER
- 「スマートロックツール」の導入により、遠隔でチェックイン・アウトの対応が出来るように! 1日で6時間の業務効率を実現し、ホテルのブランディングに注力
名護市宮里にある白浜ホテルは、創業50年以上の歴史を持つ古民家ホテルだ。しかし、経営者と常連客の高齢化もあり、数年もの間開店休業状態だった。2014年、存続の危機に瀕したホテルは、先代から娘である鈴木斎(すずき・いつき)氏へと引き継がれる。
10ある客室を切り盛りするのは鈴木氏たった一人。鈴木氏は一連の業務をワンオペで行いながら、チェックイン・アウトのために自身が長時間拘束され、お客様を待たせることも多かったフロント業務に注目した。
様々なツールやシステムを検討した結果、スマートロックツール「YEEUU SMART FINGERPRINT LOCK(ワイイ―イ―ユーユー・スマート・フィンガープリント・ロック)」(以下、スマートロック)の導入を決定。1日最大6時間の大幅な業務時間の削減に成功した。
より重点を置くべき業務はどれか、そのために削減できる業務は何か。業務の“選択と集中”を考え、今あるものと時間を最大限に生かしていく鈴木氏の着眼点は、大きな示唆に富む。
大切にしてきた“対面接客”という原点に立ち返ることで見えてきた課題
私が経営を引き継ぐ前は、高齢の母が一人で切り盛りしていました。当然行き届いた接客やPRまで手が回らず、開店休業状態。常連客はご高齢で足が遠のき、新規顧客の開拓もできず、お客様は減っていくばかり…。そんな状態なので、「次に台風が来て被害が出たら、建物の維持もできない」というギリギリのところまできていました。
まず考えたのは、新しいお客様に泊まっていただくこと。維持費すらまかなえない状態なので、当然PRに使うお金はありません。元手を掛けず新しいお客様との接点を増やせる宿泊予約サイトへの登録を行いました。
その結果、宿泊予約は入ってくるようになったのですが、大変だったのはその管理でした。インターネット以外にも、電話等からの予約、旅行会社を経由する予約もあります。日々の予約状況をワンオペ業務の中で把握するのが本当に大変でした。
客足が少しずつ増えてきたことで、いつ訪れるか分からないお客様をお出迎えするため、フロントでの拘束時間が長くなっていきました。そのために他の業務に手が回らなくなって、大きな負担になっていったんです。
私たちは小さなホテルだからこそ、お客様と会話し、おもてなしすることを大事にしてきました。それは、チェックイン・アウト時の事務対応ではなく、すれ違う時、お部屋に伺う時、お食事の時など、何気なく交わす会話です。
忙しい日々の中で思い出したのは、先代の頃から大事にしてきた、そんな会話の時間でした。それを私たちは“対面接客”と呼んでいますが、お客様が増えることで、いつしかそれが守れなくなっている状態に気づきました。実際にしっかりと接客できなかったお客様の満足度は低い傾向にあり、予約サイトに低評価を付けられることも。
お客様と触れ合う時間を増やすにはどうすればいいか。一連の業務を冷静に見直した時、フロントに拘束されている私の時間、お客様の時間を短縮することが必要ではないかと考えたんです。
そこで導入したのが、スマートロックツール。ドアノブに取り付け、スマートフォンを使って施錠・解錠を管理できるシステムで、どこからでもチェックイン・アウト業務が行えます。フロントでお客様を待ち続けたり、逆に混みあってお客様を待たせてしまったりする時間がなくなりました。
他にもスマートロックツールはありましたが、このツールに決めたのは、ホテルのドアに合うものがこれしかなかったから(笑)。半分冗談ですが、取り付けるだけなので工事が不要なこと、使い慣れているスマートフォンで操作できる点が決め手でした。
スマートロックツールの導入で1日6時間の業務効率化を実現!
通常チェックインは17:00~24:00、チェックアウトは11:00まで。11:00~17:00の間でもお客様がチェックアウト、またはチェックインする場合があるので日中と朝の繁忙時間帯に重なってしまいます。通常は接客の重要なポイントと考えてしまいがちなフロント業務ですが、その時間を違うサービスに充て、お客様の満足度向上につなげる選択をしたんです。
スマートロックツールは発行した暗証番号を使って解錠・施錠を行います。お客様自身で操作していただくこともできますが、ご高齢の方には扱いが難しい場合もあり、負担にならないよう私がリモートで管理することにしました。それでも、出先からフロントのチェックイン・アウト業務を行えるので格段に動ける時間が増えました。削減できた時間は、何と1日6時間。画期的でしたね。
業務削減で生まれた時間はフランスでのシェフ経験を生かした飲食展開に。地元客増、ブランディングにも寄与
フロントでの拘束時間を1日あたり6時間も削減できたので、新たな試みにもチャレンジしています。
新規顧客獲得やPR、未来を見据えた業務を考える時間を持てるようになったことは大きな収穫でした。
実は以前、フランスでシェフをしていた経験があるんです。業務削減で得た時間を使い、思い切ってホテル内レストランでのランチ提供、お菓子の製造・販売など、新たな取り組みをスタート。そのおかげで、県外のお客様だけでなく地元のお客様にも利用していただけるようになりました。
飲食部門の強化は、ホテルのブランディングにもつながるのではないかと思っています。時間が足りない状態ではこうした取り組みを考える余裕もありませんでした。業務効率化以上の効果を実感しているところです。
IT導入に踏み切ったからこそ見出せたホテルの未来
昨年からのコロナ禍で大打撃を被ってはいますが、飲食部門の新たな取り組みは何とか軌道に乗せることができました。今後は、ビジネス利用やコロナ禍で注目されている“ワーケーション”などをターゲットとした試みも考えていきたいと思っています。
白浜ホテルのある名護市は、2021年7月に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」として世界自然遺産登録されたやんばるエリアの入口。諸外国からの認知度も上がり、コロナ禍が落ち着けば外国からのお客様も増えてくるのではないかと期待しています。
私は特にITに詳しいわけではありませんが、スマートロックツールの導入で業務を効率化でき、お客様と丁寧に接する時間を大切にしつつ、飲食部門の充実も実現できました。
ホテルのブランディング、ビジネス層といった新しい客層へのアプローチに加え、ホテルの目指す未来について考える時間を持てるようになったことも大きな収穫です。お客樣の満足度を高め、ホテルの発展につながるような業務の改善を今後も考えていきたいと思っています。