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RPA導入による効率化でより質の高いサービスを目指す
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藤原亮税理士事務所は京都府出身の藤原亮(ふじわら・りょう)氏が2013年に設立。15人のスタッフを抱える大所帯で、取引先は150社に上る。毎日のルーティーンである会計レポートの入力業務がスタッフの負担になっていたことから、業務効率化を目指してRPA(※)(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツール「Power Automate(パワー・オートメート)」を導入した。
今回は代表税理士の藤原氏、専任IT担当者としてオートメーション化を進め、業務改善に取り組む上間友幸(うえま・ともゆき)氏に話を聞いた。
※RPA=人間がコンピューター上で行う一定の作業を、ソフトを使って自動化すること
スタッフに負担がかかる会計レポートの作成業務をRPA化
藤原亮代表税理士(以下、敬称略):私たちの基本業務は、お客様が入力した会計資料をチェックする「会計監査」です。さまざまな項目に基づいて業績などを確認し、業務や事業に関するサポート・アドバイスを行います。また、1年に1回の決算申告や資金調達のサポートなど、業務内容は多岐にわたります。
藤原:どの作業にも基本的に「会計レポート」作成は必須です。会計レポート作成業務にかなりの時間を割いており、業務効率化を考える際、この作業をいかに省力化できるかが鍵になることは明白でした。
藤原:会計レポートは会社の損益や財務状況などを示し、経営状態を正確に把握するために必要な資料です。お客様から提出された会計資料と証憑類を確認しつつ、会計アプリ(専用システム)に入力し、別のスタッフが最終チェックするという工程で作成しています。高度なテクニックを必要としない単純作業ではありますが、時間がかかり、入力間違いといった人為的なミスが出てしまう問題点がありました。
藤原:お客様に質の高い提案をするためには、どの工程も省いたり軽視したりすることはできません。特に時間が必要だったレポート作成を正確かつ迅速にできるツールがあれば取り入れたいと考えていました。そこで導入したのが「Power Automate」。パソコンで繰り返し発生する作業の自動化を支援するRPAツールでした。
1時間以上かかっていたレポート作成業務が5分以下に
上間友幸氏(以下、敬称略):「Power Automate」は自動で行う作業手順を自由にプログラムできます。業務内容に合わせてカスタマイズしやすい点が導入の決め手でした。
上間:今までは、お客様(または弊社の入力担当者)が会計アプリに入力、巡回担当者が入力データのチェックを行い、修正指導を行ってレポートを作成していました。スタッフから問題点やリクエストをヒアリングした結果、レポート作成をより正確、素早く作成するためにRPAを導入することにしたんです。
上間:弊社がお客様から頂いたデータを入力したときは、二重入力を防ぐために、同じ金額・同じ日付のデータは抽出されるようRPAでプログラミングを行いました。今までは人の目で疑わしいデータをピックアップしていましたが、人によるチェックスキルのムラが発生することもありました。RPAを使う事でチェックのムラを標準化したんです。5時間ほどかかった入力とチェックの所要時間は3時間半~4時間になりました。
会計データは基本的にお客様が修正します。金額の修正、何に使ったのか記載のない場合や売上と入金額が一致しない場合などには、お客様向けに質問シートを作成するのですが、そちらも2時間から1時間ほどに圧縮することができました。
上間:会計レポートを作成するとき、今までは試算表にある金額を確認して、収支分析表に打ち込むというのを手作業で行いましたが、今はすべてをオートメーション化。数字がしっかり入っているかチェックだけの作業になったので、規模にもよりますが、少なくとも1時間はかかっていた業務を5分以下まで大幅に短縮することができています。
IT化の波に対応するためには、担当スタッフは兼任ではなく専任に
藤原:1年前に専任IT担当スタッフとして上間を採用しました。会計業務はITとの親和性が高いとされ、世の中も急速にIT導入の方向に動いています。それは裏を返せば、現状のままでは先細りになっていくのが明白だということ。事務所を継続させ、スタッフの待遇を良くするためにも、IT化の波にしっかり対応することが大事だと判断したからです。
私は文系で、ITに関する知識はさっぱりで…(笑)。「こうしたい」とか「あんな感じのシステムがあれば助かる」という要望を上間に伝え、それを実現できるアプリやシステムを探し、導入してもらっています。
藤原:上間はスタッフの声をしっかり聞き、効率化できる部分を日々探ってくれています。おかげでIT導入と活用のスピードはかなり早くなりました。単純な作業は機械に任せ、人間は人間にしかできない、スキルを必要とする作業に時間を割けば、業務全体の質も上がります。より質の高いサービスを生み出すために、ルーティーン業務のオートメーション化は急務だと思っています。
ITと人間の役割分担を明確化、付加価値の高いサービスに転換
藤原:「Power Automate」導入は効率化の実現だけでなく、機械ができることと人間にしかできないことを明確にし、役割分担を進める布石になったと考えています。
上間:ルーティーン業務を省力化できたことで、スタッフは、お客様とのより深いコミュニケーションや財務コンサルティングサービスに力を入れられるようになりました。さらに良いサービスを提供することで、お客様の業務に貢献し、結果として私たちの業務の単価も高まるステージを目指しています。
お客様にもIT導入を働き掛け、オートメーションを最大限に活用!
藤原:IT導入による業務効率を最大化するには、私たちの側だけでなく、お客様にも導入を進めてもらう必要があります。例えば、お客様から受領する書類が手書きの場合、時間と手間をかけてこれらをデジタル化しなければ「Power Automate」で読み取ることができません。これを防ぐ一番の近道は、入力資料をデジタルデータで提出してもらうこと。当事務所ではデータ入力ツールを製作し、お客様に提案することも始めていますが、一方的な押し付けにならないよう注意しています。ただ、実際に導入していただいたお客様からは、「毎月3日間必要だった複数店舗の売上1か月分の会計入力作業が30分程度で済むようになった」という喜びの声をいただきました。
こうしたデータ入力ツールの導入でお客様も楽になると思うんです。私たちの周りにこうした小さな事例を増やしていくことで、オートメーション化を広げ、お客様と一緒に成長していければと考えています。
【Profile】
「藤原亮税理士事務所」
代表:藤原 亮(ふじわら りょう)
住所:沖縄県浦添市宮城1-26-8 平安ビル201号
電話:098-988-0753
営業時間:月〜金9:00~18:00(土日祝を除く)
業務内容:初期指導・経営者との月次面談/税務・会計コンサルティング業務/事業計画・資金調達等の支援