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概要

システム・サービス名
YUNTAQ(ゆんたっく)
内容
アバター(※)を使った非接触型遠隔接客デジタルサイネージサービス(※)

※アバター=インターネットなどの仮想空間において、自分の分身となるキャラクター
※デジタルサイネージサービス=店頭や屋外に設置されたディスプレイなどの電子広告媒体を用いて、映像や文字を表示させる情報発信サービス
対象者
沖縄県産品などの物販事業者
新型コロナウイルス感染症が沖縄の経済に大きな打撃を与える中、ICTシステムを提供するパシフィックハイウェイジャパン沖縄合同会社は、デジタルサイネージを使った非接触型の遠隔接客サービス「YUNTAQ(ゆんたっく)」を開発した。
キーワードは、コロナ禍でトレンドとなった“非接触”と“アバター”の利用、そして、対面接客と同レベルの“遠隔接客”。さらには、オペレーターに障がい者を雇用し、SDGsへの取組(目標8 働きがいも成長も)も見据える。
開発を進めたパシフィックハイウェイジャパン沖縄合同会社の代表執行役員社長・佐藤秀仁氏、同事業開発部長・佐藤光浩氏、「YUNTAQ」の実証事業でオペレーター手配を担ったどこでもWork株式会社の朝比奈めぐみ氏に話を聞いた。

沖縄県にITで恩返しをしたい!

佐藤秀仁代表執行役員社長

パシフィックハイウェイ沖縄合同会社 代表執行役員社長・佐藤秀仁(以下、敬称略):弊社の前身はパシフィックハイウェイジャパン合同会社。さまざまなICTサービスを提供する中で、鏡に映ったアバターが本物のコンシェルジュのように施設を案内する近未来の“人材配信”サービス「MIRROR CONCIERGE(ミラーコンシェルジュ)」の開発に携わりました。2020年に行われた「ResorTech Okinawa おきなわIT見本市」の「ResorTech 2020 イノベーションアワード」()で、こちらのサービスがイノベーショングランプリを受賞。それがきっかけとなり、2021年3月に沖縄で事業を立ち上げたんです。

佐藤氏:事業化のきっかけをいただいた沖縄の主要産業・観光がコロナ禍で大きな打撃を受け、お土産店の売上も大きく減少している状況を、ITの力でどうにか解決できないか。そう考えて「MIRROR CONCIERGE」をヒントに開発したのが、「YUNTAQ」です。

※ResorTech 2020 イノベーションアワード=「ResorTech EXPO in Okinawa」(2021年に「ResorTech Okinawa おきなわIT見本市」から改称)で行われる、出展企業の製品やソリューションの中から特に優れた技術、製品、サービスを表彰するアワード。

双方向コミュニケーションで買い物をより楽しいものに

佐藤秀仁:「YUNTAQ」は非接触型のデジタルサイネージサービスです。店舗内に設置された「YUNTAQ」の前に立つと、画面に映るアバターを介し、離れた場所にいるオペレーターが商品の説明や問いかけへの対応を行います。「YUNTAQ」のネーミングは1,000件を超す応募の中から決定しました。沖縄の言葉で「おしゃべり」や「コミュニケーション」を表す「ゆんたく」に、質問・疑問を解決するという意味でクエスチョンの「Q」を掛け合わせたもので、気軽におしゃべりしながら買い物を楽しんでもらいたいという思いが込められています。

アバターは設置店側の要望に合わせて実写などにも変更可能

佐藤秀仁:オペレーターは、デジタルサイネージに搭載されたカメラを通して店内やお客様の様子を確認し、アバターを介して“バーチャル接客”を行います。非接触でありながら、機械的な一方通行の商品説明ではなく、双方向コミュニケーションができる点がポイントですね。お客様の質問に答えるだけでなく、通りかかったお客様に声をかけ、会話からお好みに合った商品をおすすめするといったことも可能です。そういった積極的なコミュニケーションは、より楽しく買い物をしていただくための第一歩である気がしています。

全店舗で高水準の商品知識とサービスの提供が可能に

開発部長・佐藤光浩氏

パシフィックハイウェイジャパン沖縄合同会社・佐藤光浩(以下、敬称略):接客の質の向上と店舗の人材不足解消にも期待しています。オペレーターは研修で商品知識や接客スキルを身に付けて業務に当たるため、高水準のサービス提供が可能です。また、遠隔対応だからこそですが、これまでより少ない人数で複数店舗をカバーすることができます。今後、よりお客様に喜ばれる接客ができるオペレーターを増やしていくことが、ファンやリピーターの獲得にもつながると考えています。

佐藤光浩:コロナ禍で大打撃を受けている沖縄県産品の売上に少しでも貢献したいと考え、2021年11月から「わしたショップ国際通り店」と「わしたショップ銀座本店」で実証実験を行いました。オペレーターは、コロナの影響でスタッフの人数が減っていることに加え、自宅での業務が可能かの検証も兼ねて外部スタッフに担当してもらうことに。
その際、障がいのある方々に働きやすさや働きがいを感じられる仕事を提供し、SDGsの可能性も探りたいと考え、障がい者の就労支援を行うどこでもWork株式会社にも協力いただくことにしたんです。

障がい者の雇用機会創出にも期待

どこでもWork株式会社・朝比奈めぐみ氏

どこでもWork株式会社・朝比奈めぐみ(以下、敬称略):弊社は障がいのある方が在宅で働けるようサポートしています。「YUNTAQ」は遠隔地からのバーチャル接客なので、「接客業や販売業に就きたいが、出勤のための移動や勤務先の環境などに不安を感じる」という方々の雇用機会創出にもなると期待し、実証実験に協力しました。参加したのは、沖縄に関する知識やホスピタリティーを身につけたホテル勤務経験のある方々。「YUNTAQ」の前を通ったお客様に、「はいた~い。観光ですか?」と積極的に声をかけていましたね。

朝比奈:こちらから声をかけることで、お客様は「YUNTAQ」に興味を持ち、コミュニケーションが生まれ、商品説明につながる流れができます。蓄積されたデータによって接客マニュアルは随時更新されるので、それを研修に活用することで、接客やコミュニケーション面でさらに質の高いサービスが可能になるループができている点も魅力です。

AI学習で全自動オペレーションを目指す

佐藤光浩:オペレーターが対応していない自動モードでもデータ収集が可能な点、学習が可能な点も強みです。
自動モードの場合、サイネージをタッチすると商品ラインナップ画面を表示、選んだ商品についての動画や音声、説明文などが流れます。タッチされた商品の回数や日時は記録されており、宣伝広告効果を測定するデータとして活用可能です。また、カメラ映像から得られるお客様の年代、性別といった属性データをタッチデータと組み合わせることで、性別や年代ごとに好まれる商品を割り出すこともできます。
ある年代の男性に良く選ばれる商品を同年代の男性にこちらから紹介するといった、積極的なマーケティングに生かせるんです。
さらに、画面内の商品だけでなく、周囲に陳列している商品や店舗全体のデータも収集しているので、来店頻度の少ないお客様層の獲得や、お客様があまり立ち寄らないブースの改善検討といった設置店側の課題解決にも一役買っています。

佐藤秀仁:オペレーターの経験をマニュアルに落とし込み、研修や次の接客に生かすことももちろんですが、接客データをAIに学習させることで、今後、オペレーター不在の場合でも双方向コミュニケーションを可能にしたいと考えています。「YUNTAQ」の前を通るお客様に声をかけ、商品を説明するだけでなく、学習した内容から最善の対応を自動で行えるようにしたいんです。
多言語対応機能もあるのでコロナが落ち着いて海外観光客が戻った際のインバウンド対応も可能です。「YUNTAQ」を海外に設置し、沖縄や日本の商品を販売するといったことも計画中なんですよ。

佐藤秀仁:世界各地で「YUNTAQ」が沖縄の商品をPRし、多くのお客様が笑顔でショッピングを楽しんでいる…そんな未来が私たちの最終目標です。

実証を行った「わしたショップ国際通り店」と同店の久田友也店長(写真左奥)、朝比奈氏(同左手前)、佐藤秀仁氏(同右奥)、佐藤光浩氏(同右手前)
【Profile】
「パシフィックハイウェイ沖縄合同会社」
代表:代表執行役員社長 佐藤秀仁
住所:沖縄県那覇市松尾1-12-18–403号
電話:098-953-6736
事業内容:ICTソリューション開発、ソフトウェアの輸入・販売

「どこでもWork株式会社」
代表:代表取締役 山城南美子
住所: 沖縄県那覇市樋川2-2-5(どこでもWork 梅)
電話:098-851-7819(どこでもWork 梅)
事業内容:障がい者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業

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