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【2023/10/17追記】2023年2月取材時からの取り組みはYouTubeでも紹介!

2023年2月の取材時からも様々な取り組みを着実に進めている三倉食品。
その取り組みは、こちらからもご覧いただけます!(TV放送終了後よりご覧いただけます)
TV版の見逃し配信はこちらから(TV放送終了後よりご覧いただけます)

【取材当時から進んだ取り組み】
Excelで電子帳票を作成可能な、日報・検査表・報告書といった記録業務の効率化を推進する現場帳票電子化ソリューション「XC-Gate」導入
→さらなるペーパーレス化、効率化を図る。説明書などの電子化も検討中
離れた場所で相互に書き込みや内容の確認ができ、Web会議ツールとの連携も可能な電子黒板導入
→事務所と製造現場に1台ずつ設置し、リアルタイムで製造状況や勤怠状況などの連絡事項を共有。書き込んだ内容が即反映され、双方で確認可能になることでスピーディーな情報共有と工場内に出入りする手間と時間の削減を実現

【今後の展望】
◆現在紙帳簿で管理している衛生管理、職人の経験値で微調整している製麺時の温度管理などのデジタル化
◆商品ピックアップから梱包・発送までの業務委託の実現

沖縄そばの製造や沖縄食材の全国への販売・発送を手がける三倉(みつくら)食品。取り扱うアイテムは約1000、県内外の飲食店や県内量販店など取引先は法人だけで約2000社を数え、個人も含めた取引件数(伝票発行数)は多い月で9000件以上、2022年は年間で1万296件に上りました。大量受注を発送までミスなく効率的にさばくため、取り扱う情報を独自開発のシステムで統合し、会計ソフトとも連携。また、工場のIoT化を進め、製造作業の生産性向上も図っています。現在のシステムを完成させるまでの経緯と今後の展望について、代表取締役社長の佐久間健治(さくまけんじ)さんと本部長の永山弘(ながやまひろし)さんにお話を伺いました。

ミスとクレームの頻発から、販売管理システムを独自開発

三倉食品がデジタル化に着手したきっかけは、県外の飲食店から入る電話やFAXによる注文でクレームが頻発していたことでした。2000年に放映されたNHK連続テレビ小説「ちゅらさん」に端を発した沖縄ブームで県外からの注文が増加。そばだけだった取扱商品を拡大したところ、取引数の増加と注文内容の複雑化でミスが増えてしまったのです。

株式会社三倉食品代表取締役社長 佐久間健治さん

「2010年頃に受注を電話からFAXに切り替え、顧客ごとにコードを割り当て、注文されることの多い商品だけを印字した専用の注文用紙を用意して全国を回りました。『FAXなんてない』と苦言をいただいても、『FAXでしか受け付けない』と徹底し、顧客を減らしながらも浸透させたんです。それでも、手書きで『島豆腐5』と書かれただけのFAXが届くといったこともしょっちゅうでした。『島豆腐5』ではどのメーカーのどの容量の商品かわからず、注文履歴をさかのぼって考えなければなりません。また、字がかすれて読み取れないこともあり、『商品が違う』『数が違う』といった様々なクレーム頻発の原因になっていました」(佐久間さん)

多い時で1日150件の発送のうち約2割がクレーム対象に。取引先の飲食店から寄せられる「機会損失した1日分の売上を補償してほしい」「飛行機に乗って持って来て」といった深刻なクレームの処理に追われる発送担当者の離職率は高止まりするようになってしまいました。

佐久間さんと永山さんは「何とかしなければ」と、2012年に販売管理用の基幹システム「Ands(アンズ)」構築・導入に動きます。同じ西原町のシステムベンダーが、三倉食品のビジネスに寄り添ってシステムの立ち上げやデジタル化に伴走しました。

「以前にも製造小売や卸売業向けに作られた既製システムを試したことはありましたが、失敗ばかりでした。Andsがうまくいったのは、ベンダーさんが親身になって朝から晩まで現場を見たうえで設計してくれたからです。

以前に試したシステムでは商品データベースの入力を私たち自身でやっていました。商品データベースの初期設定に不備があったせいで、請求書の金額にミスが出るといったエラーが多く、誰も使わなくなってしまったことも。Andsを構築する際にはベンダーさんが商品データベースの整備まで担ってくれたおかげで、システムが期待通りの実効性を発揮するようになり、従業員も使うようになったんです」(永山さん)

株式会社三倉食品 本部長 永山弘さん

現場の期待どおりの効果を発揮するシステムAndsを作り上げた三倉食品は、顧客のジャンルごとに異なる複数の受注プラットフォームをAndsと連携することで、飛躍的な効率向上を実現してきました。これまでに行ったアップデートを合算すると、2022年までの10年で1億円以上をシステムに投資しています。その背景にあるのは、次のような考えです。

「社員5人の人件費は、単純計算すると10年で1億2000~3000万円。売上に直結せず、ヒューマンエラーが会社の経営に大きく影響するルーティーン作業を、自動的に正確に動くシステムで代替するのは経営者として賢明な判断だと思っています。また、『この会社となら結婚してもいい』と思えるほど信頼できるベンダーさんと出会えたことも大きかった。システムのアップデートの際には、見積と人間の作業がどのくらい減らせるかを天秤にかけて意思決定してきました」(佐久間さん)

Andsの導入により、まず売上管理が正確かつスピーディーに。前月の決算が遅くとも翌月に出せるようになり、会社の財務管理が健全になりました。

飲食店からの受注をデジタル化し基幹システムと連携

Andsの運用が軌道に乗った2013年9月、飲食店向けにクラウド電子商取引プラットフォーム「BtoBプラットフォーム」を導入しAndsに接続します。FAX注文を手入力する必要がなくなり、前述した「島豆腐5」のような注文もゼロ、商品間違いや数量間違いなどのミスとクレームも激減。さらには、伝票・送り状・納品書・請求書・常温/冷蔵/冷凍などのシール類が自動で生成されるようになり、受注から発送までに必要な作業量も大幅に軽減されました。

デジタル化後の受注管理画面

クラウド化により、それまでは会社のパソコンからAndsにログインしなければ見られなかった注文状況がスマートフォンから見られるようになったことで、さらなるメリットも。

「島野菜などの生鮮食品の仕入れに無駄がなくなりました。導入前は経験則で仕入れていたのでどうしても廃棄が発生していましたが、今はスマホで必要な分が確認でき廃棄はゼロ。また、私が出勤途中に市場に立ち寄る、配達に出た従業員がついでに購入するといった対応ができるので、専任の仕入れ担当者と社用車が必要なくなりました」(佐久間さん)

また、新規顧客との商談では、プラットフォーム上に登録されたメーカーの商品情報を使って商品ラインナップの紹介ができるようになり、提案資料を作る手間も削減。

多くのメリットが得られた受注のデジタル化ですが、取引先に慣れ親しんだ注文方法から移行してもらうためには努力が必要でした。

プラットフォームからの注文で送料1000円OFFといったキャンペーンを打ったり、『タブレットがない』というお客様にタブレットを配ったりしました。全国の取引先にも訪問・説明し、現在は8割ほどのお客様が移行済です」(佐久間さん)

画面上で発送状況を確認でき電話でのやりとりが不要なこと、また、三倉食品側の注文から発送までの作業効率化により、商品の到着が早まるという顧客にとってのメリットを伝えたことも移行を後押ししました。

複数のオンラインモールから集まる個人の注文を一元化

飲食店からの注文を効率化した三倉食品が次に着手したのは、複数のオンラインモールから集まる個人の注文をクラウド上で一元化することでした。

「個人顧客からの注文対応は、楽天、Amazon、Yahoo!、弊社オフィシャルサイトなど、担当者が異なる複数のシステムを使いこなさなければならず大変でした。そこで、2019年に『ロボットイン』という外部サービスを導入。複数のオンラインモールからの注文に対するお礼や発注完了のメール、送り状の処理などを一括でできるようになり、効率が上がりました」(永山さん)

個人顧客からの注文対応でも伝票・送り状・納品書・請求書は自動で生成、常温/冷蔵/冷凍のシール類生成の機能も追加でシステムを構築しました。

さらに、BtoBプラットフォーム経由の飲食店からの受注状況と併せてAnds上で一覧できるようシステム同士をつなぎ、ピッキングと梱包の担当者が抜け漏れなく作業できる設計にしました。

「オンラインモールからの売上は2018年から2022年の5年間で約8割伸びていますが、受注業務の担当は4人から3人に減らしても対応できています。一人は宮古島からリモートで作業しています。宮古島営業所は飲食店向けの営業拠点なのですが、コロナ禍で飲食店からの受注が激減。一方で個人のオンライン購入は1日1000件を超す日も出るほど激増しました。受注作業をクラウド上で一元化しておいたことで、宮古島で余剰となった人員にオンラインモールでの受注作業を振り分けることができたんです」(佐久間さん)

受注業務が効率化されたことで、さらに多くのオンラインモールへの出店が可能に。バックエンドの効率化は、ビジネスの拡大を強力に後押ししています。

複数の外部プラットフォームをつないだ現在のシステム

また、2023年には離島や県内の飲食店との間で1~2割残っているアナログ注文をデジタル化するため、メッセージアプリ「LINE」から注文できる仕組みを導入

数々の打ち手が奏功し、一連のデジタル化の前後で、ひと月あたりの受注作業は60時間から10時間、発送作業は100時間から80時間、問い合わせ対応は40時間から5時間、クレーム対応は50時間から2時間という劇的な時短を実現しました。

運輸会社とタッグを組みオープンプラットフォーム化を目指す

三倉食品がデジタル化を徹底する志向は、既存業務の効率化を超え、小売・卸・物流業界全体をDXして沖縄の産業力を向上させる取り組みを見据えてのもの。

その端緒として、現在、沖縄そば関連商品の在庫を一部運輸会社に預け、ピッキングと梱包・発送までを業務委託する”実験”の最中です。

「オンラインモール経由の個人のお客様からの注文の中には『沖縄そばと出汁』といった単純なものが一定数あります。これを商品単位の手数料課金で外注しています。混乱することなくピッキング・梱包・発送作業の一部を切り出して外注できるのも、その日に弊社に来た注文がAndsに全てまとまり、システム上で簡単に区別・管理できるからこそです」(佐久間さん)

今後は業務委託する商品の種類を増やし、いずれはすべての商品を運輸会社の倉庫に一元化する予定。構築してきた受注システムを同業他社も利用可能なオープンプラットフォームにすることで、沖縄の零細製造業や一次産業が生み出す付加価値を高めたい考えです。

「すでに人員不足で弊社の倉庫まで配達できない状況に陥っている零細製造業者もあります。そこで、運輸会社が集荷・保管・発送まで一括で行うことができれば、そもそも弊社の倉庫を経由する必要はありません。野菜やフルーツなどの生鮮食品も、弊社で注文を取って運輸会社が農家に箱とはかりを持って集荷に行けば、農家は収穫して箱に入れるだけでお客様に新鮮な県産品を届けられるようになります」(永山さん)

「そのために、弊社がオープンプラットフォームとなって受注から請求までの煩雑な事務作業と販路拡大を引き受け、モノの移動は運輸会社に一任。メーカー各社は県外市場で戦える商品の開発や品質向上に注力できるような形に持っていきたいと思っています」(佐久間さん)

「無駄の引き算」を重視し製造現場もIoT化

デジタル技術を活用し、無駄を省いて付加価値を向上させる。佐久間さんの方針は、沖縄そばと出汁の製造現場にも及んでいます。三倉食品の工場では、麺を冷やすための扇風機のオン・オフをAI音声認識サービスで行うといった工場内のIoT化を進めているのです。

「『扇風機のON OFFくらい』と思われるかもしれませんが、パートさんが1人10分動いたら200円かかります。扇風機6台を1日に約10回もつけたり消したり、扇風機まで移動する時間も含めればかなりのロスです。IoT化で時短することに慣れてもらうために、ロボット掃除機やハイテク調理家電を従業員にプレゼントして意識の浸透を図りました」(佐久間さん)

また、「品質管理にかかわる数値の見える化が、今後取引先から選ばれるために必要になる」と考え、冷蔵庫にもIoT温度計を設置してデータを取得。リアルタイムの温度変化が追えることで品質管理の質もより向上し、台風による停電後も、「念のため」とすべての商品を廃棄する必要がなくなりました

今後は、紙で行っている衛生管理のチェックや製造日報のデジタル化、毎日のそばの製造量と必要な小麦粉の量を受注から自動計算できるようにしたいと考えている佐久間さん。「まだまだやりたいデジタル化はたくさんあります。弊社で試してうまくいったことを同業他社に共有していきたい」と、情報のシェアにも前向きです。

地域の食品製造業界にデジタル化の恩恵を広げる三倉食品。今後のさらなる活躍が期待されます。

会社名 株式会社三倉食品
設立 1983年11月
代表者 代表取締役社長 佐久間健治
従業員数 34名
従業員平均年齢 50歳
事業内容 沖縄そば製造・販売、沖縄県内外へ食材・食料品の仕入れ販売

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