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BEFORE & AFTER

キャンプサイトの決済と売上管理をアナログで行い、本社への報告資料の作成に1日最大2時間かかり、たびたびミスが起きていた。3棟のみのバンガローはオーバーブッキングのリスクが大きく宿泊予約サイトへの掲載をためらわざるを得ない状況だった
  • 決済と売上管理にクラウドPOSレジを導入。正確性が増し、作業時間は1日30分に短縮され、浮いた時間で新サービスを考案。サイトコントローラー利用でバンガローを複数の宿泊予約サイトに掲載、認知度向上と新規顧客獲得へとつなげた
※POSレジ=商品についているバーコードなどを読み取り、販売情報を集積するシステムを搭載したレジ。コンビニやスーパーで使われており、「何を・いつ・いくらで・何個販売した」といったデータが蓄積される
※クラウドPOSレジ=大型の専用機を必要とする従来のPOSレジと異なり、タブレット端末とインターネット環境があれば利用可能で、コストを最小限に抑えられる
遠浅で風光明媚なビーチを目の前にキャンプを楽しめる
株式会社屋我ビーチセンターは、名護市屋我地島にある屋我地ビーチの海水浴場とキャンプサイト、バンガローとコワーキングスペースの管理・運営を担う会社です。1976年の設立から地域住民が中心となって経営してきましたが、2016年に「ユインチホテル南城」や「沖縄リハビリテーションセンター病院」など医療・ヘルスケア施設を運営するタピックグループが事業承継。「豊かな自然を活かした観光医療の拠点の実現」というビジョンのもと、新たなスタートを切りました。

手計算でのレジ業務、表計算ソフトでの売上管理に課題

キャンプ道具やバーベキュー用品のレンタルを始めるなどサービスの充実を図ってきた屋我ビーチセンターは、さらなる事業拡大への歩みを進めています。ITツールを活用し、事業拡大に必須となる業務効率化を進めているのは、価値創造チームの瀬上敏夫(せがみとしお)さんです。

「キャンプサイトはテント40〜50張りを収容でき、おかげさまで休日は県内客で埋まりますが、平日はスペースに余裕がある状況です。県外からの観光客を呼び込んで収益力を上げたいと考えています」

より多くの利用客を受け入れるために着手したのが、既存業務の効率化。中でも、レジ業務と、毎日の売上を集計し経理部門に報告する売上管理業務に課題がありました

ツール導入を主導した価値創造チームの瀬上俊夫さん

レジ業務は利用客に申込用紙を記入してもらうところから始まります。スタッフは利用サービスや貸出品を確認し、電卓で計算し会計金額を提示。決済方法は現金のみで、場合によっては暗算でお釣りを算出することもありました。

その結果、電卓の打ち損じや暗算ミス、お釣りの渡し間違いといったヒューマンエラーがたびたび発生。申込用紙からの集計とレジの現金が合わない事態が起きていました。

スタッフは、レジ業務だけでなく多岐にわたる業務を同時進行でこなしています。レンタル品の貸出準備やチェックイン・チェックアウト対応、施設の清掃・整備、返却されたレンタル品の洗浄などのかたわら、都度対応可能なスタッフがレジに入るため、ミスの原因を特定することも困難でした。

「毎日の売上管理は、申込用紙を一枚一枚めくり、販売した商品と金額を表計算ソフトに打ち込んで算出、指定のフォーマットに転記後に経理部門へ報告していました。繁忙期になると申込用紙も大量になり、作業に2時間かかることも。これが、収益拡大にかけるべき時間を圧迫していました」

レジ業務・売上管理業務におけるヒューマンエラーと時間のロスを解消すべく、屋我ビーチセンターは以前から注目していたクラウドPOSレジの導入を決めました。

売上管理の作業時間が4分の1に。浮いた時間が新サービスの展開を後押し

タブレット端末にレジ機能が搭載されたスマレジは、画面に映し出された登録商品を指でタップして個数を入力すれば、合計金額が正確かつスピーディーに提示されます。

クラウド型POSレジとキャッシュレス決済端末をセットで使用

「簡単な画面操作でレジ業務が完結するので、電卓を打つ必要がなく、計算ミスの心配もなくなりました」

クラウド型POSレジとセットでキャッシュレス決済端末も導入。現金のみからクレジットカードや電子マネー、バーコード決済へと大幅に支払方法の選択肢が広がりました。

「海外旅行者の利用も多く以前からニーズは感じていましたが、導入に踏み切るタイミングがなかったんです。スマレジの導入がきっかけで、お客様の利便性の向上も実現できました」

決済方法は現金のみからクレジットカード、電子マネーなど幅広く

また、レジ業務で打ち込んだ売上の情報が自動的に集計され、日毎の売上データが作成されるため、最大2次時間必要だった売上集計・報告業務が30分で済むようになりました。

「自動集計されたデータをCSVファイルでダウンロードし、報告用のフォーマットに転載するだけなので、エクセルの入力や計算は不要に。2時間かかっていたものが4分の1の30分になりました」

屋我ビーチセンターでは、ツールの導入と同時期にキャンプ用具やバーベキュー機材のレンタルアイテムを30品目ほど増やしました。

ニーズにきめ細かく対応、サービス向上・売上アップに寄与するレンタルアイテム

クラウド型POSレジの導入により、レジ業務と売上管理の手間が大幅に削減できたため、増加した在庫管理業務もスムーズにこなすことが可能に。レンタルアイテムの品揃えを充実させた結果、全体の売上が10%向上し、手ぶらでキャンプ可能なプランの追加といった攻めの経営にも結びついています。

※スマレジ=株式会社スマレジが2011年に発売したクラウドPOSレジ。リアルタイム売上分析や高度な在庫管理など、店舗運営に必要なシステムを搭載。2022年1月現在、10万店舗以上の利用実績がある

在庫管理をITシステムに委ね、宿泊予約サイトで販路開拓に挑む

屋我ビーチセンターが運営するバンガローには、キャンプサイトとは別の課題がありました。

単体での認知度向上を狙うバンガロー

「バンガローの予約はほとんどが弊社ホームページからの流入で、キャンプサイトの一部としてしか認知されていない印象でした。宿泊予約サイトに掲載することで、キャンプサイトを知らない顧客層にバンガロー単体で認知を広げる余地があると考えていたんです」

予約受付窓口が複数になると、3棟しかない在庫をやりくりしてオーバーブッキングを防ぐために大きな手間がかかります。人手をかけず販路開拓に乗り出すためには、在庫を自動で調整・管理できるシステムの導入が必須でした。

「バンガローの予約管理に、サイトコントローラーを導入することにしました。具体的には同じタピックグループのユインチホテル南城も採用している「ねっぱん!」を導入することで、安心感もあり、困った時にもサポートをお願いできるだろうと考えました」

サイトコントローラーの導入で、複数の宿泊予約サイト上の空室一元管理が可能に。部屋数に応じて月額料金を支払うシンプルなプランで、機能の取捨選択に頭を悩ませることなくスムーズに導入できたそうです。現在は自社のホームページに加え、2つの宿泊予約サイトに掲載しています。

多くのプランを掲載できる機能を活用し、朝食、レイトチェックアウトなどの付帯サービスを加えた14ほどのプランを運用していましたが、選択肢が多い分、お客さまが迷ってしまうことにもつながっていました。試行錯誤の末、現在はシンプルな4プランに付帯サービスをオプションで追加していく形に落ち着いています。

これまでは利用者のほとんどが県内からでしたが、宿泊予約サイトに掲載することで認知が広がり、県外からの旅行者の宿泊先の選択肢に入ることも期待しているそう。

「在庫管理の不安が解消でき、今後は積極的に販路を広げていけます。現在は自社サイトからの流入がほとんどで、利用者も県内のお客様が中心ですが、新型コロナウイルスの影響が落ち着き、観光に活気が戻った際には狙っている県外顧客の流入にも効果を発揮すると期待しています。将来的には海外向け宿泊予約サイトへの掲載も視野に入れ、運用を継続していきたいです」

在庫管理をシステムに任せることで、リスクとストレスを最小限に抑え、新規顧客の獲得に向かう基盤が整いました。

※サイトコントローラー「ねっぱん!」:複数の宿泊予約サイトの在庫・料金・予約情報を一括管理できるクラウドシステム

優先したい機能を明確し、現場のニーズに合ったツールを選択

屋我ビーチセンターがITツール導入を円滑に進められた要因には、自社の課題に対するベストな解決策を模索してきたことがあります。

「レジ業務に関しては以前から改善策を探って類似サービスを調べ、スマレジの担当者との商談も進めていました。ただ、弊社のような小さな会社にとって、導入コストは大きなハードル。小規模事業者等IT導入支援事業(令和4年度より小規模事業者等デジタル化支援事業)を紹介してもらい、やっと動き出すことができました」

最終的にスマレジに決めた理由は二つ。一つは、本社経理システムとの連動性です。

「スマレジには、外部システムとの連携機能が搭載されています。本社経理システムとスマレジを連動させて経理側から売上データを引き出せるようになれば、いずれ30分の報告作業もなくせるかもしれません」

スマレジの操作画面

もう一つはアフターサービスの充実度です。

「レジ業務は本来、目の前にお客様がいる状態でスピーディーに処理する必要があります。そこで、システムエラーなどが起きてもその場で問い合わせて解決できるよう、電話サポートのあるプランを選びました。カード決済で端末機には決済完了と表示されているのに、スマレジの画面では未決済のまま、という不具合で実際に活用しましたね。通信エラーによるトラブルでしたが、対処法がわかりませんでした。カードを再び通せば二重請求になりかねません。カスタマーサポートに電話し、指示に従って操作、解決できました」

このほか、導入時には運用開始前に使い方を練習できるトレーニングモードという機能を活用しました。

「スマレジが届いて運用を開始するまではトレーニングモードに設定し、操作方法を練習しました。慣らし運転ができたことで、大きな戸惑いもなく移行できたと感じています」

目の前の課題解決から将来のビジョンへつながるITツールの見極めを

ITツールの導入がひと段落した今、瀬上さんは次のように振り返ります。

「小さな会社では、ITツール一つが会社の経営にも大きく影響することもあると思います。導入したツールを効果的に活用するためにも、目の前の不便さを一時的・断片的に解消するためではなく、デジタル化による課題解決が将来へのビジョンにつながっているかどうか、見極めが重要ではないでしょうか」

その言葉通り、ITツールという心強い武器を手に入れて「豊かな自然を活かした観光医療の拠点の実現」というビジョンへの動きを加速させている屋我ビーチセンター。瀬上さんを中心に、今後もデジタルを駆使し、収益力を上げていくビジョンは明確です。

「2023年春には、キャンプサイトのサブスクリプションプランを開始し、より多くの方に自然に癒される機会を届けていきたいと思っています。キャンプは夏から秋が人気で、冬場の利用率はどうしても下がってしまいますが、年間を通して来てもらえるのが理想。サブスクプランを気軽に使ってもらうためにも、申込から支払いまで自社ホームページ上で完結させる機能を備えたいです」

【PROFILE】
会社名:株式会社屋我ビーチセンター
代表者:宮里好一
所在地:905-1631沖縄県名護市字屋我143番地
TEL:0980-52-8123
事業内容:観光施設の管理・運営
設立:1976年8月
従業員数 : 7名
平均年齢 : 40歳

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