- 新着記事

IT化の三大阻害要因、解決できます。小規模事業者等デジタル化支援事業「デジタル化はじめの一歩」(小規模事業者等デジタル化促進支援セミナー)
- 支援情報を探す
「人がいない」「資金がない」「時間がない」。IT・デジタル導入を阻む三大要因を解決できる補助事業があること、ご存じでしょうか。
業務のデジタル化を支援する補助金に加え、専門家によるツールの選定や導入・定着支援を受けられる小規模事業者等デジタル化支援事業(沖縄県商工労働部中小企業支援課事業、以下、デジタル化支援事業※)がその答えです。令和2年度から令和6年度の累計補助金交付253件、専門家派遣484件を数え、令和6年度の利用満足度は97%。数多くの県内事業者のデジタル導入をサポートし、生産性向上に大きな成果をもたらしています。
2024年3月11日、4社の成果事例発表、県内IT企業が開発したデジタルツールの紹介などを中心に行われたデジタル化促進セミナーのレポートから、事業や補助金を活用し、IT・デジタル導入をスムーズに進めるコツやノウハウを探ります。
※小規模事業者等デジタル化支援事業
沖縄県商工労働部中小企業支援課による、沖縄県内の小規模事業者などの労働生産性向上のため、業務のデジタル化を促進する取り組みを支援する事業。
ITツール導入経費や活用支援を受けるための経費などに対し、従業員数20名以下の場合補助上限額50万円(補助率3/4)、従業員数21名以上の場合補助上限額100万円(補助率2/3)までを補助。さらに、専門家によるITツール選定・活用サポートも無料で受けられる。令和6年度事務局は沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)。
デジタル化の具体的な方法を知り、最初の一歩を
開会の挨拶は、受託事業者であるISCOの理事長、稲垣純一さん。
デジタル化支援事業については、過去4年間の平均で23%、年間最大42%の労働生産性向上を成し遂げた実績を紹介しました。セミナーを通し、デジタル技術活用のために求められている、「何をどのようにデジタル化するか」の具体的な方法を知り、最初の一歩を踏み出すことに役立ててほしい、とのメッセージが発せられました。

IT化の三大阻害要因を解決できるデジタル化支援事業
「システム管理部署・担当がいない」「資金不足」「IT化に対する時間的な余裕がない」。
県内事業者へのアンケート(※)でIT利活用の阻害要因として挙げられたトップ3です。
ISCO産業DXセクションのプロジェクトマネージャー・デジタル化支援事業運営事務局の屋良朝法(やらとものり)さんは、補助金・支援・調査の3軸からなるデジタル化支援事業で解決できる、と語ります。
「システム管理部署・担当がいない」→専門家によるツール選定・定着支援
「資金不足」→補助金活用で資金を調達
「IT化に対する時間的な余裕がない」→補助金は対象期間が限られ、締切効果が背中を押す

「デジタル化に積極的でない経営者層を変えたい」という悩みを抱える現場の担当者に向けては、セミナーへの参加、アーカイブ動画視聴が動機付けや意識変革につながると話し、社内での情報共有を提案しました。
投影される資料は、グラフや文字がびっしりと並ぶ読み応えのある内容。県内企業のデジタル化の現状、向き合い方、さらにはデジタル活用に使える様々な補助金のメリット・デメリットのまとめなどがデータでわかりやすく示されています。「持ち帰ってじっくり読み、今後の参考にしてほしい」という言葉が示す通り、県内企業を支援する熱意が伝わる内容でした。
県内企業のIT・デジタル化状況を一覧!R6小規模事業者等デジタル化促進セミナー資料(配布資料)
※アンケート:小規模事業者等デジタル化支援事業の応募条件として義務付けられているIT利活用アンケート。県内事業者の現状やニーズを調査し、事業内容をより良いものとするために実施される
◆デジタル化支援事業概要
・専門家によるITツール選定・活用サポートが補助金の効果を最大化
・実施するアンケートの調査・分析結果からアップデートを続けている
・商工会などとの連携も活発で、南大東島・小浜島など小さな離島でも活用されている
・今年度の補助金採択件数62件、専門家派遣100件
・活用している事業者の70%以上が従業員20名以下の事業者
・95%の事業者が補助金、事務局対応、専門家派遣に「良かった」「とても良かった」と回答
◆直近3年のIT利活用アンケートから見える沖縄県のデジタル化状況
・サービス業・小売業・建設業、食品製造業で活用が多い
・IT利活用の促進要因は「経営層の意欲や認識」「IT導入の投資効果が明白であること」「挑戦する組織風土」
・IT利活用の阻害要因は「システム管理部署・担当がいない」「資金不足」「IT化に対する時間的な余裕がない」「ベンダー等の外部の協力がない」
・業務時短・省力化、アナログ業務、基幹システムの強化に対する課題感が強い
・会計・経理については導入意欲率・導入率がともに高く、リモート会議・クラウド利用は導入率が急増
・コロナ後の需要回復による影響もあるものの、宿泊業は付加価値額向上率 77%、労働生産性52%。卸売業、医療・福祉、建設業も安定成長。労働生産性-27%の飲食業、-7%の生活関連サービス業、-3%の食品製造業は人件費や原材料費の高騰の影響も強い
小規模事業者が活用できる補助金情報まとめ
小規模事業者等デジタル化支援事業補助金(沖縄県)
ITツール導入による労働生産性の向上を補助金と専門家派遣で支援
IT導入補助金
中小企業等の生産性向上を図るためのITツール導入を支援
観光事業者収益力向上サポート事業補助金(沖縄県)
観光事業者が人材不足を補うため行う設備投資やシステム構築などの無人化・省人化を支援
小規模事業者持続化補助金(中小企業庁)
小規模事業者の販路拡大や経営基化を支援
商工会議所の管轄地域で事業を営んでいる小規模事業者等はこちら
商工会の管轄地域で事業を営んでいる小規模事業者等はこちら
中小企業省力化投資補助金(中小企業基盤整備機構)
中小企業等の売上拡大や生産性向上のため、IoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品の導入を支援
沖縄DX促進支援事業(沖縄県)
企業の DX に向け、DX推進計画の策定支援、IT企業とのマッチング支援、補助金で段階的に支援
ものづくり補助金(中小企業庁)
中小企業等のものづくり能力の向上を支援
ICTビジネス高度化支援事業(沖縄県)
県内情報通信企業の製品・サービス・技術の高度化
デジタル化設備導入補助金(沖縄物流デジタル技術活用推進事業、沖縄県)
物流効率化・迅速化を目的としたAIやIoT等のIT技術を活用したデジタル化の取組を支援
※2024年3月時点の情報
技あり沖縄県産ITツールの紹介
①米軍人向け賃貸管理システム「Leasmart(リースマート)」/「Leasmart Exchange &Pay(リースマートエクスチェンジアンドペイ)」

デジタル化支援事業でも導入実績のある宿泊施設向けセルフチェックインシステム「Smart front MujInn(スマートフロントムジン)」(※)を運営する株式会社ユナイテッドは、令和6年度沖縄DX促進支援事業を活用して開発した米軍人向けに特化した賃貸管理システムLeasmartと、両替機能を備えた家賃支払所Leasmart Exchange &Payを紹介しました。
手書きや電話、FAXがあたりまえの非効率な手続きが多かった管理米軍人向け賃貸管理業務、現金中心の支払環境を大きく変えるツールです(近日サービス提供開始予定)。
※Smart front MujInn:株式会社ユナイテッドと株式会社ゴールドバリュークリエーションが共同開発。平成31年度沖縄アジアITビジネス創出促進事業 他産業連携クラウド環境促進部門採択事業
②ダイビングショップ専用クラウド予約・顧客管理システム「OKABAN-陸番-」

「OKABAN-陸番-」は、令和3年度 IT活用ビジネスモデル・テストベッド構築支援事業 スモールビジネス創出支援部門に採択され、開発を進めたシステム。秋元さん自身の10年間のダイビングインストラクター経験から設計されており、ダイビング前後の事務処理をサポートすることで、「ゲストに海で安全に楽しんでもらう」ことに集中できる内容です。
導入した事業者からは、業務の効率化はもちろん、ミスを探す時間や心理的なストレスも軽減されると好評。解約率はわずか0.4%です。
③1分で間取り図が完成!「いえらぶAI間取り」

外注するとコストがかかり、内製では1件に20~30分を要する。不動産業界で必要不可欠な間取り図にまつわる課題を解決しようと生み出されたのが、AIの画像認識機能で間取り図を自動作成する「いえらぶAI間取り」です。開発は、令和5年度ICTビジネス高度化支援事業 ビジネス構築ステージを活用して行われました。
読込から1~2分で精度の高い間取り図が作成され、従来は難しかった手動での細かな調整・修正にも対応。リリースから約3カ月目となる2025年2月のユーザー数は2,700に上っています。
④国産ローコードツールの先駆け、「Wagby(ワグビィ)」

「企業の根幹となる基幹システムをいかに効率的に作れるか」。Wagbyは、世の中で「ローコード」「ノーコード」という言葉が聞かれる以前に沖縄で形作られ、2006年から全国へとユーザーを広げ約450社が導入。1,000を超えるシステムが稼働しています。
プログラミングの知識はないものの、業務に通じ必要なデータを知る社員がWagbyを使って基幹系システムを構築した例を挙げ、「DXの主導権を持つなら自社のデータを手放してはいけない。データは会社の命」と語ったのが印象的でした。
令和6年度、補助金を活用した事業者による成果事例発表
オペレーション簡素化で 在庫切れ・ミスゼロに! 【合同会社やんばるジェラート】
BEFORE & AFTER
- ノーコード・ローコードツール「kintone」導入、在庫管理を開始
- 店舗・セントラルキッチンの在庫を一括確認でき、在庫切れゼロに
- 店舗担当者のオペレーションが簡素化。実際の在庫数とデータ上の数字の不一致も減少
- 各店舗の収支管理も開始予定、DXを進めて業務拡大を目指す

航空業界を定年退職後、沖縄本島北部でホテル立ち上げに関わった國場さん。年間3億~3億5000万円の果物や野菜が廃棄されていることを知り、衝撃を受けます。2015年「ジェラートマエストロコンテスト」での優勝経験を持つ柴野大造氏の「こんな素材の宝庫は金沢にも東京にもない」という言葉にも背中を押され、やんばるジェラート創業に至りました。
瞬く間に県内に6店舗を出店、ホテルや観光施設など卸先開拓も順調でしたが、課題だったのは在庫管理です。セントラルキッチンでジェラートを製造、各店舗や卸先からのLINE連絡によって配送していましたが、Excel入力ベースで正確な在庫数を把握できず、タイムリーに提供できなかったのです。
kintone導入後は店舗・セントラルキッチンの在庫を一括確認できるようになり、在庫切れはゼロに。店舗担当者の業務が効率化されミスがなくなるとともに、実際の在庫数とデータ上の数字の不一致も減少しました。
卸先は東京にも拡大、フランチャイズでの香港出店も実現し、県内外、国外からのオファーも受けているやんばるジェラート。「DXを進めなければ、そうした商談にも応じられない」という言葉に、DXの必要性を痛感し継続して取り組む姿勢が表れていました。
生徒満足度向上・教室拡大の布石にも。スクール運営アプリ導入【二胡姫響(にこひめひびき)】
BEFORE & AFTER
- ツール選定支援と補助金を活用し、スクール管理システム「スコラプラス」を導入
- 連絡業務効率化、月謝管理の正確性向上、スケジュール調整の円滑化を実現。スタッフがレッスンに専念できる環境が整う
- 欠席振替機能が退会防止に、アンケートやデータ分析機能がイベントの参加率向上や新規生徒獲得施策につながる
- 分校開設、新たなレッスン・教材作成、講師人材育成へ

中国伝統楽器「二胡(にこ)」を用いた音楽教室運営を行う二胡姫響。那覇本校に約60名、石垣分校に約15名の生徒が通います。レッスン料金・スケジュール・生徒とのやりとりや情報管理など教室運営に関わる作業はすべて手作業。ヒューマンエラーやスタッフがレッスンに集中しづらい状況が生まれ、生徒の退会につながるケースもありました。
那覇商工会議所の紹介でデジタル化支援事業を知り、相談へ。取り組むべき課題を整理して教室運営管理アプリの導入を決定します。専門家派遣で規模感・予算に合うものを絞り込み、IT企業との会議を重ねて約4カ月で本格運用を開始しました。
教室運営業務改善アプリと生徒連絡用アプリがセットになった「スコラプラス」により、月謝・スケジュール・生徒管理がミスなく一括で可能になり、負担を減らすことでレッスンの質が向上。生徒自身がレッスンスケジュールの確認や欠席の連絡・振替をアプリ上で行えることが退会防止にもつながり、大きな効果を実感しているそうです。
生徒や体験レッスン参加者の情報の蓄積・分析から、分校開設、新たなレッスン・教材作成、講師人材育成を今後の展望として挙げた上地さん。業務改善にとどまらずデータ活用も開始し、DXへの一歩を踏み出している様子がうかがえました。
セミナーでもらったデジタル化に進む勇気【株式会社ナンスイ】
BEFORE & AFTER
- kintoneとキッチンプリンターを導入・連携
- 生産指示カードを必要な枚数、加工順に出力・カットされるシステムを構築
- 作業時間は月55時間削減。取引先開拓にも取り組めるようになった
- 受注のオンライン化、請求書の自動化なども見据え、予定している工場移転の際には「ビッグDX」を実現する

昨年度の本事業セミナーに登壇した4社の成果事例発表に背中を押された、と語った島袋さん。人の手で行うべき業務とITで解決できる業務を振り分け、IT化のために何が必要かを知りたいという明確な課題意識を持って事務局に相談に訪れました。
株式会社ナンスイは、「赤魚60g×156枚」「カラスカレイ1cm角×260g」など施設ごとに異なる注文に応えて冷凍水産物を加工し、県内約120の施設に納品しています。生産指示カードをA4用紙に作成・印刷、裁断し、加工場で作業順に並び替えて作業するアナログなフロー、熟練スタッフのみが取引先ごとの決まりを把握している属人化が課題でした。
専門家派遣も活用してIT企業との橋渡し役を担ってもらい、導入に至ったのはkintoneとキッチンプリンター。二つを連携させることにより、生産指示カードを必要な枚数、加工順に出力・カットするシステムを作りました。IT企業担当者は「ただのIT化ではなく、売上を伸ばし利益に繋げるところまでがDX」と、営業や利益向上につながるポイントまで説明。島袋さんは社員の顔が輝く様子を見、必ず成功させなければ、と感じたといいます。
作業時間は月55時間削減。取引先開拓にも取り組めるようになった今、受注のオンライン化、請求書の自動化なども見据えています。予定している工場移転の際には、「ビッグDX」を実現したい、と前向きな言葉で締めくくりました。
IT専門家と顧問契約、継続的なDXの体制を構築【琉球ワークス株式会社】
BEFORE & AFTER
- 専門家と顧問契約。Al-OCRの導入と注文データの販売管理への自動連携実施
- 受注から販売管理への自動化を実現、小さなミスも見逃さない確認体制を構築
- 顧問契約で月1回の対応だけでも専門家から得られる情報や効果は大きく、今後の発展の力になると実感

企業のオリジナル商品、土産品などの企画・製造を行う琉球ワークス株式会社。令和4年度・6年度にデジタル化支援事業を活用し、継続的にDXを進めています。
受発注システム導入で注文の95%を自動化したものの、手作業による在庫確認や入力が必要なFAX・電話注文は一部残さざるを得ませんでした。また、得意先によっては注文データを販売管理システムに手入力しなければならず、ヒューマンエラーが起きていたそうです。
令和4年度にツール選定支援を担当した専門家と顧問契約を結び、どういったシステム化を進めるべきか継続的に検討していた岩月さんは、データ連携機能追加にもデジタル化支援事業の補助金を活用できることを知り、Al-OCRの導入と注文データの販売管理への自動連携を決定します。
受注から販売管理への自動化を実現できたことにより、小さなミスも見逃さない確認体制を構築。「社内DXに戦略的に関わるIT専門家を常時雇用することは私たちのような中小企業には難しいが、顧問契約、月1回対応のでも得られる情報や効果が非常に大きく、今後の発展の力になると感じる」と語り、専門家の力を借りる大切さを伝えていました。
デジタル化への一歩。まずは相談窓口へ
成果事例を発表した4社すべてが専門家の力を借りています。「何のためにどんなツールが必要か」「どのツールが自社に合っているのか」という選定、IT企業との橋渡し役や定着段階でのサポートなど、各社様々な支援のもと、大きな成果を挙げています。
「システム管理部署・担当がいない」「資金不足」「IT化に対する時間的な余裕がない」。冒頭、事業担当の屋良さんが示したように、デジタル化の阻害要因となるこれらの「ない」を、「ある」に変えられる要素がデジタル化支援事業には詰まっています。まずは相談窓口に気軽に足を運び、自社の課題を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。
セミナーにはリアル会場47名、オンライン89名、計136名(登壇者除く、事務局発表)が参加しました。こちらの記事では概要のみをお伝えしましたが、あなたの会社の抱える課題解決やデジタル導入の後押し、ヒントとなれば幸いです。
セミナーは全編動画で視聴可能です。こちらからご覧ください(視聴には氏名やメールアドレスなどの登録が必要です。近日公開予定)。
デジタル化支援事業を実際に利用した事業者の事例をもっと知りたい!という方は、こちらから。
ResorTech Okinawa Webサイトでも、デジタル化支援事業を利用して業務効率化・生産性向上を実現した事例を多数掲載しています。こちらからご覧ください。
デジタル化支援事業以外にも様々な支援メニューがあります。こちらから、あなたに合った支援情報を探してみてください。